「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ」

 

 

 

沖田くんから入手した巡回ルートで張っていた俺は、今日も首尾よく土方くんを捕獲した。

その俺が発した先のひと言に、相変わらずの冷たい目を向ける我が恋人。

「意味わかんねえこと言って邪魔するなや。この暇人が」

うん、今日も程よいツン具合だね。大丈夫、いつものことだ、くじけない。

「あれれ、お菓子持ってないか。じゃあ、どうしよっかなあ」

「なんだ、そんなに困ってんのか?物乞いするなら菓子じゃなくてもっと…」

「違―う!…いや、困ってないわけじゃないけどね、今日はハロウィン!知ってるか?」

 天人の行事ごとに疎い土方が把握しているはずはないと思いつつ訊いて見る。だってこいつ、クリスマスだって知ったのはここ最近のことらしいからね。案の定黙り込むと「知らない」と言うのも面白くないって感じで睨んでる。

「さあ、トリック オア トリート?」

 

 

「いたずらしちゃうよ」2011.ハロウィン

 

 

 

「で、なんなんだよ。そのはろうぃんってえのは」

「だから…お菓子くれなきゃいたずらしていいって祭りだろ?」

 潔くここは負けを認めたのか、土方が珍しくも素直に訊いて来た。あれ?そういえば俺も詳しくは知らないな。かぼちゃの祭り?

「なんか意味があんだろ。ったく、てめえは…クリスマスはケーキを食う日で正月はお節と雑煮の日なんだろうな」

 え?なんでハロウィン自体知らないヤツからバカにされてんの?てか、俺としては早くいたずらに持ち込みたいんだけど…。

 そう、土方が菓子を持ち歩いてるなんて全く思っていない。

菓子を持ってなければいたずらしていい、なんて、まるで俺と土方のための祭りじゃね?何かの宗教がらみなんだろうけど、こんなありがたい神様なら俺は改宗してもいいと思ったね。まあ、今だって無宗教みたいなもんだけど。

とにかく、大人のいたずらといえば、額に肉なんて書くレベルじゃない。あっはんうっふんの楽しいいたずらに決まってるから。

 そんな俺の思惑に気づく様子もなく土方は改めて街を見渡し、やたらと店がオレンジ色に飾られているのに気づいたようだった。そして何か思い立ったように俺の顔を見た。

「じゃあ、俺も菓子くれねえといたずらすっぞ」

「え?お前お菓子なんか欲しいのか?」

「これだけの騒ぎになってるんだったら、近藤さんとか絶対面白がってやりそうだもんな。準備しといた方がいいかもしれねえ」

 きたああああっ!なんで今“近藤さん”?!

お前ね、それはツンの一部としては認められないから。しかもデレ期がなかなか来ないと思ったら、思いっきり別方向に向けられてたということかい!なんか、めっさムカついた。こうなったら迫り方変えてやる!

 俺は目と眉の間を狭くしたキメ顔でささやいた。

「菓子はねえからいたずらしてみろよ」

 おそらく、俺があちこちに声かけて菓子をせしめてると思ってんだろ。残念だったな。今日の狙いは土方だけだから、俺からも菓子はやれねえよ。さあ、お前からのいたずらって何だ。子供みてえないたずらしてくんじゃね・・・・

「うおあああああっ!あちあちあちっいいい」

 土方はあろうことか俺の手に煙草の火を押し付けようとしやがった!

「なにやってんのおおっ」

「え?いたずら…」

「いやいやいやソレいたずらの域超えてるから!」

 あああ俺が甘かったよ。ここでキスのひとつも仕掛けてくるとか、少しでも想像した俺はどんなロマンチストなの。今まで一回でもそんなことあったか?

それどころかこのコ、お菓子くれないなら根性焼きって…どこのヤンキーだよ!いや、ヤンキーだってお菓子ごときでそんなことしねえ!

 これはあれだよね。躾が必要ってパターンじゃね?

 

 

 

・・・・・うわあ、俺ってどんな局面でも楽しい方向に持ってく天才じゃないかな。これは土方と付き合うようになってから身についた悲しい習性かもしれないけど。でもOK.。土方くんに躾、これ超楽しい。ワクワクすっぞ。

俺は土方の手から煙草を奪い取った。

「土方くんよぅ、ちょいとオイタが過ぎんじゃねえの?」

「ああ?てめえがやれっつったんだろうが」

「いやあ、俺たちもう大人じゃん?」

「はあ?」

「大人がどういういたずらするのか、躾がてら教えてやるよ」

言いながら、土方の煙草を口に咥えてニッと笑った。

そのままむんずと腕を取り、無理矢理路地裏へと引っ張り込む。

「・・・っ、な、んんっ」

 土方があたふたしてる間に、煙草を吐き出しさっさと唇をいただいた。

「んん・・ふぁっ」

仕事中に、しかも街中でなんて、土方が最も嫌がるパターンだ。物騒にも刀を抜いて反撃しようとしてきたが、俺はその右手を柄ごと押さえ込んだ。果敢に左手一本で胸を押し返そうにも、徐々に力が抜けていく様に、俺は唇を重ねたままニンマリする。 

 明日から11月、陽もいい具合に短くなってきたなあ。ここで足腰立たなくして、後はそのままホテルへゴーとしゃれこみたい。

「ぷはっ・・」

ようやく解放された唇からは、すぐに罵声が飛び出した。

「何してくれてんだこのクソ天パ!菓子の恨みか!ビンボー人が!」

 潤んだ目をして言われても、妄想をグルグル回す俺の頭には耳から入った土方の罵声が甘く変換されて入ってくる。いやこの流れだと菓子の恨みよりヤケドの恨みだろ、と一応突っ込んでおきたいけど、別のものを突っ込むために、そこはグッと我慢した。

「え?いたずらだよ、土方くん」

「い…いたずらの域超えてるっつーの!犯罪だぞボケェ!」

さっき自分が傷害罪で捕まりそうなことしたクセに棚に上げる、そんなところも躾の対象だ。

「いたずらした方された方、両方気持ちよくなれるのが、大人のいたずらなんだってば。土方くんもそういうとこ大人にならなきゃ…」

「気持ちよくねえ!」

「じゃあ、気持ちよくなるまでやったげる。それが俺のいたずらだからね」

そう言って俺は土方の上着の内側に右手を差し込んだ。

“カサッ”

上着から何かカサついた音がした。

「あ、ちょっと待て!あった!」

途端、土方が左手で俺の顎を押す。どうでもいいけどこういう時は胸を押すとかの方がカワイイと思うんだけど・・って何があったって?

土方が左のポケットから飴を取り出した。

“禁煙飴”と書かれた個包装が3つ。ちょっと待て、今更、しかもなんだその飴。

「昨日原田がくれたんだよ。あいつ数少ない煙草仲間だったのに最近禁煙しやがって・・・しかも俺まで巻き込もうとしやがる。俺ァやめる気なんてねえってのに」

しかも他の男からの貰いモンだとおおおっ?

「ほれ、3つともやる。大サービス」

呆気にとられた俺の手をとり、飴を載せて土方は仕事へ戻っていった。

 

 

 

土方くん、これはないだろ。

これノンシュガーって書いてあるよ。菓子っていうのは糖分でできてるもんなんだよ。せめてチョコとかクッキー、ああ、饅頭でもいいな・・

「じゃなくてえええええっ!!」

土方から菓子なんかもらうつもりはさらさらなかった。そんなものよりいたずらから上手いことごまかして甘い夜に持ち込もうとしていたのだが・・・俺の計画こそが甘かったってことか。

 

 

 

明日から11月。陽はもうとっぷり暮れて冷たい風がひゅるりと吹いてきた。

「帰るか・・・」

暖かい我が家へ帰って、風呂にでも入ろう。

火がちょっとだけ触れた手の甲がじんじん痛み始めた。風呂に入ったらしみるかな。

 

 

2011.11.6

ハロウィン当日間に合わなかったので放置していたのですが・・せっかくなのでUPしてみました。銀さんがカワイソウです。ゴメン 

 

 

 小説トップへ戻る