誕生日なんかどうでもいい 2012.土誕

 

 

「誕生日?ンなもんガキじゃあるめぇし、どうでもいいだろ」

 

忘れてた、忘れてたよこれは。間違いない。

巡回中の土方くんを捕まえて「おめでとー!!!」と抱きついたら「何すんだこのクソ天パ」の怒号とともに、思いっきりグーで殴られた。なんかもう、抱きつかれたら殴るってのが条件反射になってないか、土方くん。

俺以外の奴に襲われた時はぜひそうあってほしいものだけど、俺達一応恋人同士。去年の誕生日には自分からうちに来てくれてたじゃないか。

俺の当然の抗議に土方くんは一瞬確かにハッとした。そしてあさっての方向を見て思考を巡らせた後、冒頭のひと言を発したわけだ。

 

多分、あちこちで立ち始める鯉のぼりを見て、ああ、そろそろか・・なんて感じてたとは思うよ。朝礼やってるらしいから、今日が5月5日だってことも朝は覚えてたかもしれない。けれど、多分、仕事中はそんなこと頭から消えてたんだろうなあ。別にそんなこと責めやしないのに、殴ってしまった手前、この意地っ張りは「ああ、忘れてた」のひと言が言えないのだろう。

 

でも俺は今日ひとつ大人になった土方くんより、さらに少しだけお兄さんだ。ここは年長者の威厳を示し、許してあげて、そして教え諭さなければならない。

 

「あのなあ土方くん。ガキじゃないからこそ誕生日は忘れちゃならないんだよ?」

「ああ?どういう意味だ」

「誕生日ってぇのはガキがご馳走食ってプレゼントもらう日ってわけじゃないんだよ。俺達大人はな、自分が産んでもらったこととか、この年まで生きてこられたことに感謝し、周囲に礼を言わなきゃいけねぇ」

あ、土方くんの俺を見る目が変わった。言葉は素直じゃないけど、こういうとこは意外と素直なんだよね。よかった。これこないだテレビでなんとかいう坊さんが言ってたんだよな。

「・・・・・たまにはいいこと言うじゃねえか。そうか、周囲への礼・・」

「だから何かください」

「俺の一瞬の感動を返せ」

「じょ・・、冗談だって!!まあ、礼をしろとは言わねえけどよ、素直に祝わせてくれてもいいんじゃね?」

「そうだな・・悪いことした・・」

「いいんだよ、俺ぁ土方くんが生まれてきてくれたことを祝いたいんだ」

「・・・近藤さんもそう言ってくれてたのに・・・」

「へ?」

普段、俺を悩ますワード“近藤さん”がいきなり出てきたよ。これ出てきた後、俺毎回イタイ目見てるんだけど・・。

「確か何日か前、祝いの宴会やりてぇって・・・そんなモンやってくれなくてもいいって突っぱねちまって・・」

「ああ・・・そいつぁいけないな。やっぱ世話になったといやぁ近藤だろうしな」

“近藤さん”を否定すると最早その後の逆転は見込めない。今までの経験を活かして同意するが、しかしこのままだと・・!!俺と土方くんの甘いバースデーナイトのため、回転しろよ俺の頭!!

「あ、あのさ、土方くん。近藤にはホント世話になってるよな。そいで真選組の仲間もそうだろうし、もっと広く言えば松平のおっさんとか、死んじまったけど兄ちゃんとか、母ちゃんとか・・本当に感謝しなくちゃいけねえ人はたくさんいるなあ」

「・・・確かに、おめえの言うとおりだ」

「そいつらが一番望んでることは何だと思う?」

「・・・何だ?」

「お前が幸せに過ごすことだよ」

 

これは賭けだった。ここで「分かった!近藤さんと過ごす」なんて言われた日にゃあ俺もう立ち直れない。いいこと言ってます的な感じを装いながらも、俺の目は“俺と居て”という念を発していたんだと思う。必死だったんだと思う。なんせ土方くんが焦ってこう言ったぐらいだから。

「あ、えーと・・遅くなると思うけど、今日お前んち行っていいか?」

 


おそらく、素直な土方くんはその日近藤と酒を酌み交わして礼を言ったんだと思う。そして律儀にも12時前に駆け込むように俺の家に来てくれた。酒呑んで全力疾走って、お前、誕生日に死んじまったらどうすんの、と思ったけど、やっぱり嬉しかった。う、嬉しかった・・結局何もできなかったけどね。

だってまだ兄ちゃんやら母ちゃんやらに感謝しなきゃって、そんな時に手ぇ出せないじゃん。気まずいじゃん。

 

結局、忙しい中怒涛のごとく仕事を片付け、いろんな人に感謝しまくったであろう土方くんは、今、服を着たまま熟睡している。

 

まあ、いいか。

少しの気配にも飛び起きる鬼の副長が、俺の前ではお姫様抱っこして布団に運んでも目を覚まさないぐらい熟睡してくれるって・・“子供か!”と突っ込みながらも頬が緩むのを抑えられない。

そういえば、何もプレゼントしてないな。逆にもらったようなもんで悪いなあと思いつつ、俺は同じ布団にもぐりこんだ。

 

HAPPY BIRTHDAY!十四郎!!

END

2012/05/05

 

 銀さんが土方さんより年上というのは、私の勝手な設定です。でも、そうとしか思えない。銀さんっつーか、攘夷陣は近藤さんより年上でもおかしくないと思ってます(^^;)

 小説トップへ戻る